3Dプリンターで植木鉢を作る|防水と水抜きのコツを解説
3Dプリンターで植木鉢を作るときは、底穴と受け皿、それに水に濡れる前提の素材選びを最初に決めてください。
PLAは印刷が簡単なかわりに耐熱が低く、直射日光が当たるベランダでは夏場に変形することがあります。
鉢そのものの形は単純なので造形の難易度は高くありませんが、水やりのたびに水が通る道具なので、普通の小物とは注意点が変わります。
本記事では、スパイラル印刷での基本手順・水漏れと根腐れを防ぐ底の作り方・PLAとPETGの使い分けを解説します。

おうち3Dプリンター編集部
おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
3Dプリンターで植木鉢を作る基本手順
植木鉢は筒に底を付けた形なので、外周を一筆書きで積み上げる「スパイラル(花瓶モード)」が使えます。
壁が1本の線になるぶん印刷時間が短く、層どうしの継ぎ目が縦に揃わないので、水が染み出す経路ができにくい作りになります。
Bambu StudioやOrcaSlicer、Curaのいずれにもこのモードがあります。
データを用意する
自分でモデリングするなら、Tinkercadのように円柱から円柱を引き算するだけで鉢の形になるWebアプリで十分です。
既存データから始めるなら、MakerWorldやPrintables、Thingiverseに公開されている鉢のモデルを使います。
ライセンスはモデルごとに作者が設定しているので、作ったものを販売したい場合はモデルページの表示を確認してください。
スライサーで設定する
- スパイラルモードをオンにする。壁が1周の連続線になり、縦方向の継ぎ目が消えます
- 壁の太さは0.4mmノズルで2〜3本ぶん相当を目安にする。薄すぎると土の重みで外側へ膨らみます
- 底の層数は多めに取る。鉢の底は水が溜まる場所なので、ここが薄いと隙間から漏れます
- サポート材は原則オフ。鉢は真上に伸びる形なので、張り出しがなければ要りません
スパイラルモードでは充填率や上面の設定がほぼ無効になるため、壁の太さと底の層数の2つだけを詰めれば形が決まります。印刷が終わったら、底を指で押して反りがないかだけ確かめてください。
底穴と受け皿を手順の最初に決める理由
鉢の失敗でいちばん実害が大きいのは、底穴を開け忘れることです。
穴がないと水が抜けず、土の中に水が残ったままになって根腐れを起こします。
しかも印刷後に穴を開けようとすると、積層方向に力がかかって底が割れることがあります。
穴はデータの段階で入れてください。
受け皿も同じタイミングで決めます。
印刷した鉢を室内の木製家具に直置きすると、底穴から抜けた水がそのまま天板に広がります。
受け皿を一緒に印刷するなら、鉢の外径より片側5mmほど大きい円盤に縁を立てた形にして、同じ素材で作っておくと色も揃います。
二重鉢にする方法もあります。
外側は底穴のない容器として印刷し、内側に底穴を開けた鉢を落とし込む作りです。
受け皿を別に置かずに済みますが、外側に溜まった水を捨てる手間が増えるので、室内で使うか屋外に置くかで選んでください。
屋外なら底穴+直置き、室内なら受け皿か二重構造という切り分けになります。
PLA・PETG・TPUで何が変わるか
印刷素材の違いは、置き場所の違いとして表れます。
Bambu Lab A1 miniやA1の公式推奨はPLA・PETG・TPU・PVAで、ABSやASAは推奨されていません。
鉢づくりで現実的な選択肢はPLAとPETGの2つです。
| 素材 | 印刷のしやすさ | 向く置き場所 |
|---|---|---|
| PLA | いちばん簡単。反りにくく仕上がりが整う | 室内・日陰のベランダ。夏の直射日光下では変形の報告が多い素材です |
| PETG | 糸引きが出やすく温度調整が要る | 屋外。PLAより熱と衝撃に強く、水に濡れる用途で選ばれます |
| TPU | 柔らかく送り不良が出やすい | 鉢本体には不向き。滑り止めのリングなど小物向けです |
PETGを使うならノズル温度を素材メーカーの推奨レンジ内で10℃刻みに振り、糸引きが少ない点を探してください。
PETGは吸湿すると印刷中にプツプツと音がして表面が荒れます。
開封から時間が経った巻きは、フィラメント乾燥機で乾かしてから使うと表面が落ち着きます。
乾燥温度と時間は素材とメーカーで違うので、巻きに書かれた推奨値を確認してください。
素材ごとの性質をもう少し広く知りたい場合は、3Dプリンターで作る収納グッズの実例まとめで水まわりや荷重のかかる用途での素材の選び分けを解説しています。
植木鉢でよくある失敗と直し方
底の縁から水が染みる
スパイラルモードで印刷した鉢でも、底と壁がつながる1層目の境目から水が出ることがあります。
底の層数を増やすのが先で、それでも止まらないときは壁の太さを1本ぶん増やしてください。
印刷後の対処としては、内側に鉢底ネットとビニールの内袋を入れて、鉢そのものを水に触れさせない方法もあります。
土の重みで鉢が外へ膨らむ
直径が大きい鉢ほど起きます。
壁1本の造形は横からの力に弱いので、直径15cmを超えるサイズではスパイラルモードをやめて、通常の印刷で壁を複数本にしてください。
縦のリブや外周の帯を数段入れたデザインにすると、同じ壁厚でも形が保てます。
置いたときにガタつく
1層目が反っていると、底が均一に接地しません。
ビルドプレート(造形物を載せる板)の油分を落とし、Zオフセットを合わせてから再印刷するのが基本の対処です。
印刷済みのものは、底面を平らな紙やすりの上で円を描くように軽く削ると接地が取れます。
屋外に置いたら表面が白くなった
紫外線による劣化です。
PLAは屋外で長期間使う素材としては想定されておらず、色あせや脆さが進みます。
屋外で長く使いたい鉢はPETGを選び、それでも数年単位の屋外設置では交換前提と考えてください。
必要な道具と代用できるもの
鉢そのものは3Dプリンターとフィラメントだけで作れます。
あったほうが仕上がりが安定するのは、底穴のバリを取るデザインナイフ、接地面を整える紙やすり(240〜400番程度)、それと鉢底ネットです。
ネットは土が穴から流れ出るのを防ぐもので、園芸店や100均で買える範囲のものを切って使えます。
受け皿は印刷しなくても、園芸用のプラスチック皿で代用できます。
分割して印刷した鉢を貼り合わせる場合は接着剤が要りますが、素材で選ぶ接着剤が変わります。
PLAは一般的な瞬間接着剤で付くとされる一方、セメダインPPXのようなプライマー式の難接着材料用接着剤は、公式にPE・PP・POM・シリコーンゴム・フッ素樹脂向けと明記されています。
水に浸かる部分の接着は、どの接着剤でも経年でゆるむ前提で、分割しないで作れるサイズに収めるほうが確実な設計です。
なお、A1 miniの造形サイズは180×180×180mm、A1は256×256×256mmです。手のひらサイズの多肉植物用ならA1 miniで足りますが、観葉植物の7号鉢(直径約21cm)を一体で作りたいならA1クラスの造形サイズが要ります。
印刷後にやること・交換のタイミング
印刷が終わったら、植える前に水を張って30分ほど置き、底の縁から染みてこないか確かめてください。
ここで漏れが見つかれば、土を入れる前に対処できます。
問題がなければ鉢底ネットを敷き、土を入れます。
使い始めてからの点検は、植え替えのタイミングに合わせるのが手間が少ない方法です。
土を出したときに、底穴のまわりにひびが入っていないか、壁が外へ膨らんでいないかを見ます。
屋外のPLA鉢は、押したときに硬く乾いた感触になって指で欠けるようなら、劣化が進んでいる状態です。
屋外設置では、水やりと日射で素材が受ける負荷が室内より大きくなります。
1シーズンごとに外して点検し、ひびが見つかった鉢は土を入れ替えるときに交換してください。
印刷した鉢はデータが残っているので、同じものを刷り直せるのが樹脂鉢を自作する利点です。
ほかにどんな暮らしの道具を作れるかは、3Dプリンターで作れるものの実例で家庭での活用例をまとめて解説しています。
よくある質問
印刷した植木鉢は水やりで溶けませんか
PLAもPETGも、常温の水に触れただけで溶けることはありません。
PLAが弱いのは水より熱と紫外線で、夏の直射日光が当たる場所では軟化や色あせが起きます。
屋外で使うならPETGを選んでください。
鉢の中に土を直接入れても大丈夫ですか
入れられます。
ただし底穴から細かい土が流れ出るので、鉢底ネットを敷いてから土を入れると水やりのたびの流出を抑えられます。
水漏れが気になる室内では、内側にビニールの内袋を入れて二重にする方法もあります。
スパイラルモードを使わないとだめですか
通常の印刷でも作れます。
直径が大きい鉢や、縁に厚みを持たせたデザインでは、むしろ壁を複数本にする通常印刷のほうが土の重みに耐えます。
スパイラルモードが向くのは、小さめで単純な筒形の鉢です。
多肉植物用の小さい鉢はどのくらいの時間で印刷できますか
サイズ・層の高さ・印刷速度で大きく変わるため、一律の時間は出せません。
スライサーで配置すると予想時間が表示されるので、その数字で判断してください。
壁1本のスパイラルモードは、同じ形を通常印刷するより短く済みます。
水耕栽培用の容器も同じ作り方でいいですか
底穴を開けない点が変わります。
常に水が入ったままになるので、底と壁の層数を多めに取り、印刷後に必ず水を張って漏れを確かめてください。
印刷物の表面には細かい積層の溝があり、藻やぬめりが付きやすい形状です。
まとめ
植木鉢づくりで結果を分けるのは、底穴と受け皿をデータの段階で決めることと、置き場所に合わせて素材を選ぶことの2点です。
室内や日陰ならPLAで印刷が楽に済み、直射日光の当たる屋外ならPETGを選んで、それでも交換前提で考えます。
形そのものは単純なので、スパイラルモードで壁の太さと底の層数を詰めれば、最初の1個から実用になる鉢が作れます。
屋外や水に強いPETGの性質は3DプリンターのPETGフィラメントとは?強度・設定・PLAとの違いで解説しています。
ぜひ本記事の素材比較表と底穴・受け皿の決め方を参考に、自分の置き場所に合った鉢を印刷してみてください。



