SHARE:

3Dプリンターの素材はどう使い分ける?PLA・PETG・TPUの選び方

夏の車内に置いておいたスマホスタンドが、翌日には湾曲していた。

造形も設定も悪くないのに起きるこの手の失敗は、素材の選び違いです。

家庭用のFDM機で現実的に選べるのは主にPLA・PETG・TPUの3つで、Bambu Lab A1 miniやA1の公式仕様でも推奨素材はPLA・PETG・TPU・PVAと明記されています。

分かれ目になるのは、熱にどこまで耐えるかと、力がかかったときに割れるか粘るか。

この2点を無視して見た目や価格だけで選ぶと、作った翌週に同じ物をもう一度印刷することになります。

本記事では、3素材の性質の違い・用途からの選び分け・機種側の対応制限・湿気対策の目安を解説します。

おうち3Dプリンター編集部

おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。

※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。

素材選びで最初に見るのは、耐熱と粘りの2点

作りたい物を思い浮かべたとき、まず答えるべき質問は「それは熱くなる場所に置くか」と「押されたり曲げられたりするか」です。

この2つに両方「いいえ」なら、選択肢はPLAでほぼ足ります。

室内の飾り、模型、収納の仕切り、工具のスタンド。

こうした用途でPLA以外を選ぶ理由はあまりありません。

逆に、どちらかに「はい」が付いた瞬間に話が変わります。

窓際・車内・屋外のように温度が上がる場所ならPETG、フックや留め具のように繰り返し力がかかる部品もPETG、押しつけて変形してほしいならTPU。

仕上がりの美しさや印刷の失敗率で見ればPLAが最も扱いやすいので、「PLAで足りるかどうか」を先に判定して、足りないときだけ他へ移るという順番が実用的です。

なお、強度は素材名だけで決まりません。

壁の厚み、内部の詰まり具合、積層方向のどれもが結果に効きます。

同じPETGでも、層と層が剥がれる向きに力がかかれば簡単に割れます。

素材の選択は出発点であって、それだけで丈夫な物になるわけではないという前提は持っておいてください。

PLA・PETG・TPUは何が違うのか

PLA|低い温度で溶けるから扱いやすい

3素材のなかで最も低い温度で溶け、反りが出にくく、表面の艶や色の再現もきれいに出ます。

ヒートベッドの温度も高く要りません。

A1 miniのベッド最高温度は80℃、A1は100℃ですが、PLAはそのどちらでも余裕を持って使える範囲です。

弱点は熱で、直射日光や車内のような環境では形が保てません。

設定や特性の詰め方はPLAフィラメントの特徴と設定で解説しています。

PETG|熱と衝撃に強い代わりに糸を引く

ペットボトルと近い樹脂で、粘りがあり、割れるより先に曲がる方向に壊れます。

熱にも水にもPLAより強い。

その代償が印刷の難しさで、糸引き(ノズルが移動する間に樹脂が細く伸びる現象)が出やすく、造形物の表面に毛羽が残ります。

透明や半透明の色も濁りやすい。

実用部品向きで、見せる置物向きではありません。

詳細はPETGの強度と印刷設定で解説しています。

TPU|ゴムのように曲がるが、送りが難しい

指で曲げられる柔らかさが特徴で、滑り止め、パッキン状の部品、機器を保護するケースに向きます。

柔らかいぶん押し出し機構の中で座屈しやすく、印刷速度を落とす必要があります。

硬さのグレードが製品ごとに違うので、同じTPUという表記でも仕上がりの感触が変わる点にも注意してください。

素材別に向いている人・向かない人

素材作りの特徴向いている人避けたい場面
PLA低温で溶け、反りが少なく表面がきれい最初の1巻を選ぶ人、室内の小物や模型を作る人夏の車内、直射日光が当たる窓際
PETG粘りがあり熱と水に強いが糸引きが出る屋外・水回りの部品、力がかかる留め具を作る人表面の艶や透明感を見せたい造形
TPUゴム状に曲がる。低速でしか送れない滑り止めやケースなど、たわみが必要な物を作る人多色ユニット経由での印刷、寸法精度を詰めたい部品
PVA水に溶ける。サポート材として使う複雑な形を多色機で一体造形したい人単色運用のみで、湿度管理をしたくない場合

向かない人をはっきり書くとすれば、TPUは「1巻目」に選ぶ素材ではありません。

送り不良の切り分けには機構の理解が要り、最初の一本で詰まると原因が素材なのか設定なのか判断できません。

PVAも同様で、吸湿の管理が前提の素材です。

まずPLAで一通り成功させて、必要が出たときにPETG、その次にTPUという順に増やすほうが、失敗の原因を切り分けやすくなります。

置き場所と用途から素材を絞る

熱がかかる場所に置くか

判定はほぼこれだけです。

閉め切った車内、直射日光の当たるダッシュボード、暖房機器の近く、湯気の当たるキッチンまわり。

ここに置く物にPLAを使うと、時間をかけて少しずつ歪みます。

壊れ方が派手ではないので原因に気づきにくく、「造形が悪かった」と誤解しやすい失敗です。

同じ形をPETGで作り直すのが早い解決になります。

力がかかるか、たわむ必要があるか

フック、クリップ、ネジ穴のある固定具のように繰り返し荷重がかかる部品はPETG。

落としても割れてほしくないケース類もPETGです。

一方で、押しつけて密着させたい、隙間を埋めたい、滑らないようにしたいという要求ならTPUしかありません。

硬い素材でパッキン形状を作っても機能しないので、ここは素材で解決する場面です。

逆に、飾って眺めるだけの造形物、写真を撮る対象、色を重ねて見せたい物は、PLAのバリエーションから選ぶほうが満足度が高くなります。

マット、シルク、グラデーションなど表面の見え方が違う製品が各社から出ていて、素材を替えるより仕上がりの差が大きい。

素材全体の見取り図はフィラメント種類の早見表で解説しています。

使える素材は機種側で決まる

A1シリーズでABS・ASAは公式に推奨されない

A1 miniとA1の公式仕様では、推奨素材がPLA・PETG・TPU・PVA、非推奨としてABS・ASA・PC・PA・PET・繊維強化材が挙げられています。

オープンフレームで庫内の温度を保てないため、収縮の大きい素材では反りや層の剥離が起きやすいという構造上の理由です。

ABSやASAを扱いたいなら、密閉型のP1Sのように筐体と冷却・活性炭フィルターを備えた機種が対応範囲に入ります。

カーボンやガラス繊維入りを使うなら、ノズル材質も条件になります。

P1Sはステンレスノズルのため公式FAQで繊維系に不向きとされ、P2Sは焼入スチールノズルを標準にしてCF・GF系を対応素材に含めています。

機種ごとの対応差はBambu Lab全機種の違いの比較で解説しています。

AMS liteはTPUを通せない

多色印刷を目的にAMS lite(自動素材供給システム)を買った人がつまずくのがこれです。

AMS liteの対応素材にTPU・TPEは含まれておらず、濡れたPVAも非対応。

柔らかい素材はチューブ内で座屈するため、外部スプールから直接送る運用になります。

多色でゴム部品を作る計画は、購入前に見直しておいたほうが安全です。

スプール幅40〜68mm・内径53〜58mmという寸法条件もあるので、他社製フィラメントを混ぜるなら巻きの形も確認してください。

素材が湿気ると、設定を詰めても直らない

ノズルからパチパチと音が出る、表面が毛羽立つ、層がうまく乗らない。

この症状で温度や速度をいくら調整しても改善しないなら、原因は水分です。

とくにTPUとPVAは吸湿の影響が出やすく、開封して放置した巻きは印刷前に乾かす前提で考えてください。

症状から原因をたどる手順は失敗の原因を症状から探す一覧で解説しています。

乾燥に使う機器の上限温度は製品によって違います。

SUNLU FilaDryer S2は70℃までで1kg巻を1本、S4は同じ70℃(±3℃)で1kg巻を4本同時に入れられ、庫内湿度が50%を超えると自動で再加熱する制御が付きます。

Creality SpacePi X4は45〜85℃の範囲で1〜48時間のタイマー運転に対応し、直径200mm・幅150mm以下のスプールという条件付きで3kg巻も入ります。

温度と時間は素材ごとに違い、同じPETGでもメーカー間で推奨値が異なります。

低い温度帯から試して、必ず使っているフィラメントのメーカー推奨値を確認してください。

素材別の目安は乾燥時間と温度の目安一覧で解説しています。

よくある質問

最初の1巻はどの素材を選べばいいですか

PLAです。

低い温度で溶けて反りが出にくく、失敗したときの原因も切り分けやすい。

A1 mini・A1のどちらでも公式の推奨素材に入っています。

最初から実用部品を作る予定があるなら、2巻目にPETGを足す流れがおすすめです。

PETGはPLAより丈夫と言えますか

粘りと耐熱ではPETGが優位ですが、「丈夫」の中身によります。

硬さや寸法の安定はPLAのほうが出しやすく、積層方向に力がかかれば素材にかかわらず割れます。

用途で言えば、熱と衝撃が想定される部品はPETG、精度と見た目を優先する造形はPLAという切り分けになります。

TPUはどの機種でも印刷できますか

柔らかさのグレードと押出機構の相性で変わります。

A1 mini・A1では公式の推奨素材に含まれますが、AMS lite経由では非対応なので外部スプールから送ってください。

速度を落とし、リトラクト量を控えるのが基本の方向です。

フィラメントのメーカーは揃えたほうがいいですか

揃えると設定を使い回せるので手間が減ります。

同じ素材名でも公差や添加剤が違い、温度や流量の最適値がずれるためです。

メーカーごとの傾向はおすすめメーカーと選び方で解説しています。

まとめ

素材選びは、置く場所が熱くなるかと、力や柔らかさが要るかという2点で切り分けられます。

どちらも当てはまらないならPLA、熱と衝撃が絡むならPETG、たわみが機能そのものならTPU。

そして選んだ素材が実際に使えるかどうかは、機種側の推奨リストとノズル材質、多色ユニットの対応表で決まります。

A1シリーズでABSを狙う、AMS liteでTPUを多色にする、といった計画はここで止まります。

ぜひ本記事の比較表と用途別の切り分けを参考に、これから作りたい物に必要な素材から順に、手元の1巻を選んでください。

あなたへのおすすめ