3Dプリンターのフィラメント乾燥時間と温度|素材別の目安表
印刷を始めた直後からパチパチと小さな音が鳴り、表面に細かい毛羽やザラつきが出る。
フィラメントが湿気を吸ったときに出やすい症状です。
乾燥とは、この吸い込んだ水分を、樹脂が柔らかくなる温度より低い温度で時間をかけて抜く作業を指します。
ややこしいのは、必要な温度と時間が素材とメーカーで違うことです。
市販の乾燥機を見ても、SUNLU FilaDryer S2・S4は上限70℃、Creality SpacePi X4は45〜85℃と、設定できる幅からすでに違います。
ここを手持ちの素材と揃えずに買うと、推奨温度に届かない機械が手元に残ります。
本記事では、乾燥の表記と単位の読み方・素材と巻数からの選び方・スプール寸法で起きる失敗を解説します。

おうち3Dプリンター編集部
おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
3Dプリンターのフィラメント乾燥は、吸った水分を熱で抜く作業
乾燥で使う単位は3種類しかありません。
温度は℃、時間は時間(h)、庫内の湿り具合は%RH(相対湿度)です。
この3つが組み合わさって「何℃で何時間、湿度が何%まで落ちたら終わり」という手順になります。
フィラメント径のmmや造形サイズのmmとは別の数字なので、仕様表では単位を見て役割を分けて読んでください。
水分を含んだまま印刷すると、ノズル内で水が一気に蒸気に変わります。
開始直後のパチパチという破裂音、表面の細かい泡、糸引きの増加、層と層の密着の弱まり。
どれも湿気が原因で出やすくなる症状です。
ただし似た見え方はノズルの詰まりや温度設定のずれでも起きるので、原因の切り分けは3Dプリンターの失敗を症状から探す一覧で解説しています。
混同しやすいのが、乾燥剤入りの密閉ボックスとの違いです。
あれはこれから吸う分を抑える保管の道具で、すでに吸った水分を短時間で抜く役割は加熱する側が担います。
Creality SpacePi X4は乾燥剤を内蔵した密閉保管を兼ねる設計で、SUNLU FilaDryer S4も保管ボックスとして使えます。
乾燥と保管は別の工程ですが、兼用できる機種なら置き場所は1つで足ります。
乾燥機の仕様表は、温度・時間・湿度・寸法の順に読む
商品ページに並ぶ数字は、単位を見れば何を意味しているのかが分かります。
手持ちの素材とスプールを次の表に当てて、1行でも外れたら候補から落とす。
この読み方をすると、買ってから困る要素がほぼなくなります。
| 表記 | 意味 | とくに確認したい人 |
|---|---|---|
| 乾燥温度(℃) | 庫内で保てる温度の範囲。S2・S4は上限70℃、SpacePi X4は45〜85℃ | 全員。PA(ナイロン)やPCを使う人は上限を最優先で |
| タイマー(時間) | 連続運転を設定できる長さ。SpacePi X4は1〜48時間 | 吸湿の進んだ巻を長時間かけて戻したい人 |
| 庫内湿度(%RH) | 湿度の表示と自動制御。S4は設定30〜50%で25%まで下げ、50%超で自動再加熱 | 乾燥後そのまま入れて保管したい人 |
| 対応フィラメント径(mm) | 1.75mm/2.85mm/3.0mmのどれを想定した経路か。S4は3種、SpacePi X4は1.75mmと2.85mm | 2.85mmの素材を使う人 |
| 内部寸法・入る巻数 | S4は内部450×210×211mmに1kg巻×4本。SpacePi X4は直径200mm以下・幅150mm以下で、条件を満たせば3kg巻 | 大巻や他社スプールを混ぜて使う人 |
| 消費電力(W) | S4は330W、SpacePi X4は360W(100〜120V) | プリンターと同じコンセントから使う人 |
素材ごとの乾燥温度は40℃台から70℃台まで幅がある
推奨温度が素材で変わるのは、樹脂が柔らかくなる温度が違うからです。
PLAはその温度が低いので低温側、PAやPCは高温側。
家庭用の乾燥機が上限70℃や45〜85℃というレンジを持つのは、この幅をまとめてカバーするためです。
実際に何℃で何時間かけるかは素材とメーカーで異なるので、フィラメントメーカーが公表している推奨値をそのまま採用してください。
ざっくりした位置関係だけ言えば、PLAやPETGのような扱いやすい素材は低め〜中間の温度で足り、PA・PC・PVAのように吸湿しやすい素材は上限側の温度と長い時間を求められます。
素材ごとの性質はPLAの特徴と印刷設定とPETGの強度と印刷設定で解説しています。
1種類しか使わないなら候補は広く、吸湿しやすい素材まで手を広げる予定があるなら、その時点で上限温度の高い機種を選んでおくほうが買い直しになりません。
何巻まとめて乾燥させるかで、選ぶ機種が変わる
温度のレンジが足りているなら、次に効くのは容量と使い方です。
ここは好みではなく、手持ちの巻数とスプールの実寸から決まります。
同時に入れる巻数から絞る
1巻ずつ回す運用ならSUNLU FilaDryer S2が合います。
1kg巻を1本、上限70℃で、PLA・PETG・TPU・ABS・PVA・PVBに加えてPA・PCにも正式対応。
多色や素材の使い分けで巻数が増えるならS4で、1kg巻が4本入り、25℃から50℃まで30分・70℃まで50分という公称の昇温時間が示されています。
大巻や保管兼用を重視するならSpacePi X4で、スプールは直径200mm以下・幅150mm以下という条件付きです。
素材を何種類も並行して使う人は、フィラメント種類ごとの特性早見表で吸湿の傾向を確認してから巻数を見積もると過不足が出にくくなります。
印刷しながら給送するか、乾かしてから使うか
S2は印刷中の直接給送に対応しています。
SpacePi X4はCFS(フィラメント自動供給)との併用が公式に案内されています。
一方でAMS lite(自動素材供給システム)を使っているなら、TPUが非対応、PVAはドライ状態のみ対応という制約があります。
柔らかい素材は外部スプールから送り、PVAは乾かしたものを入れる。
この使い分けを前提にすると、乾燥機を給送経路に組み込むかどうかの判断が付きます。
対応素材の表記が製品ごとに違う理由
同じPAという記載でも、S2は正式対応とうたい、SpacePi X4はPAHTまで含めた素材名を45〜85℃のレンジとあわせて挙げています。
差が出るのは、庫内で保てる上限温度と、メーカーが検証した素材の範囲が違うからです。
対応表は「その素材を乾かせる温度設定がある」という意味であって、素材ごとの最適な温度そのものを示すものではありません。
確認の順序は、フィラメント側の推奨温度が先、乾燥機のレンジが後になります。
もう一つ、乾燥機の対応素材とプリンターの対応素材は別です。
乾燥機がPAやPCを扱えても、Bambu Lab A1・A1 miniではABS・ASA・PC・PAが公式に「推奨ではありません」とされています。
オープンフレームで庫内温度を保てないためです。
乾かせる素材と印刷できる素材は一致しないので、素材を増やす前にBambu Lab全機種の違いの比較で機種ごとの対応素材を確認しておくと無駄がありません。
仕様が合わないときに起きる3つの失敗と、確認する場所
買ってから発覚する失敗は、次の3つにほぼ集約されます。
入らない
スプールの直径や幅が庫内の制限を超える。SpacePi X4なら直径200mm・幅150mmが境目で、径1.75mmと2.85mm以外のフィラメントも想定外
届かない
上限温度が素材の推奨に足りず、時間をかけても湿気が残る。上限70℃の機種でPA・PCを扱うなら、メーカー推奨値が収まるかを先に照合する
上げすぎる
設定できる範囲でも推奨を超えれば、フィラメントが柔らかくなって巻が張り付き、スプールも変形しかねない。素材側の推奨温度が上限です
数値はどこに書いてあるか
フィラメント側は、パッケージのラベルとメーカーが公開している技術データシートに乾燥温度と時間が記載されています。
乾燥機側は商品ページの仕様欄で、見る行は「対応素材」「対応フィラメント径」「内部寸法または対応スプール径」「温度範囲」「消費電力」の5つ。
ここが揃っていない商品説明は、判断材料が足りないと考えてよいでしょう。
電気関係の表記にも注意点があります。
SUNLU FilaDryer S2・S4は本体側にもPSE認証を取得している旨が販売元サンステラの記載にありますが、これは同社の取扱分についての話で、並行輸入品には付きません。
PSEはACアダプターと本体で別に扱われるため、「PSE付き」というひとことでまとめずに、どちらの認証なのかを商品ページで読み分けてください。
よくある質問
フィラメントは何時間乾燥させればいいですか
素材とメーカーで変わるので、フィラメント側の推奨値に合わせるのが原則です。
機器側の目安として、SpacePi X4はタイマーを1〜48時間で設定でき、S4は25℃から70℃に達するまで公称50分かかります。
昇温にかかる時間は乾燥時間に含まれないと考えて、設定は余裕を持たせてください。
印刷中も乾燥機に入れたままで使えますか
対応をうたっている機種なら可能です。
SUNLU FilaDryer S2は印刷中の直接給送に対応し、SpacePi X4はCFSとの併用が公式に案内されています。
ただしAMS liteはTPUが非対応で、PVAもドライ状態のみの対応です。
柔らかい素材を使うときは外部スプールから送る前提で経路を組んでください。
食品乾燥機やオーブンで代用できますか
おすすめしません。
専用機は上限70℃や45〜85℃といった域を保つ前提で作られていて、SpacePi X4のように難燃グレードUL 94 V-0を明記した製品もあります。
家庭用の調理機器は下限温度が高く温度のばらつきも読めないため、樹脂が変形する温度域に踏み込みやすいです。
まとめ
乾燥の仕様は、温度(℃)・時間(h)・湿度(%RH)・寸法(mm)の4種類の数字で読み解けます。
決める順序は、使う素材のメーカー推奨温度を調べ、その上限が機器のレンジに収まるかを見て、最後に同時に入れる巻数とスプールの実寸を当てる。
この順番で見れば、上限70℃のS2・S4で足りるのか、45〜85℃のSpacePi X4まで必要なのかが自分の条件から決まります。
乾かせる素材と印刷できる素材が別だという点も、素材を増やす前に押さえておきたいところです。
ぜひ本記事の仕様表と3つの失敗パターンを参考に、手持ちのフィラメントとスプールの実寸を並べて確認してください。



