3Dプリンターの層ズレの原因と対処法|機械か設定かで直す
30層目を超えたあたりから、造形物が横にずれたまま積み上がっています。
原因はベルトの緩み、ヘッドと造形物の衝突、速度と加速度の出しすぎの3タイプに分かれますが、どれも仕上がりは同じ段差になるため、見た目だけでは見分けられません。
Bambu Lab A1のように最高500mm/sをうたう機種でも、重い造形物を高速で動かせば起こります。
本記事では、ズレの向きから原因を絞る手順・原因別の直し方・効果が薄い対処まで解説します。

おうち3Dプリンター編集部
おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
層ズレの原因は、ベルトの緩み・ヘッドの衝突・速度の出しすぎ
層ズレは、ヘッドまたはベッドが本来止まるべき座標からずれたまま次の層を積んだ結果です。スライサー上の座標は正しいのに、実際の位置がついていかなかったという状態なので、原因は駆動部か、動きを邪魔した何かのどちらかに絞られます。
ベルトとプーリーの緩み
FDM方式の家庭用機は、ステッピングモーターの回転をベルトで直線運動に変えています。
ベルトが伸びたり、モーター軸のプーリーを留めるイモネジが緩んだりすると、モーターは指示どおり回っているのに軸が同じだけ動きません。
使い込むほど少しずつ進行するため、買った直後は出なかったのに最近になって出はじめた場合は、まずここを疑ってください。
ヘッドが造形物にぶつかる
反って浮き上がった端や、サポート材が倒れて出っ張った部分にノズルが当たると、その衝撃で座標が飛びます。
特定の高さで毎回ずれるなら、原因は駆動部ではなくこの衝突です。
オーバーハング部分の垂れも同じで、垂れた樹脂が次の層の通り道に残っていると、そこでヘッドが弾かれます。
速度と加速度が造形物の重さに合っていない
A1シリーズの最高加速度は10000mm/s²、P1Sや P2Sでは20000mm/s²が公式値です。
この数字は空荷に近い状態での上限で、ベッドが前後に動くベッドスリンガー型のA1では、背の高い造形物が載るほどY方向の慣性が増し、急な切り返しでベルトが滑ったりモーターが脱調したりします。
高速設定のまま大物を積んだときにだけ出るなら、ここが原因です。
ズレの向きと再現性で原因を切り分ける
最初に見るのは、ずれた方向です。
前後(Y)だけにずれているならY軸の駆動部、左右(X)だけならX軸、両方向に階段状にずれているならヘッドの衝突や強い振動が疑われます。
CoreXY機ではX方向とY方向を2本のベルトが分担して作るため、片側のベルトだけが緩むと斜め方向のズレになります。
次に、同じデータを印刷して同じ高さで再現するかを確かめてください。
毎回同じ高さなら、その高さにある形状が引き金です。
浮きや垂れが無いかをモデルの断面で確認します。
高さがばらつくなら駆動部か発熱側です。
切り分けの仕上げとして、速度を半分程度に落として同じデータを印刷します。
これで出なくなるなら速度と加速度、出るならベルトとプーリーの点検へ進んでください。
症状から原因を広く当たりたいときは、3Dプリンターの失敗の原因を症状から探す一覧で層ズレ以外の症状とあわせて解説しています。
原因別に見る層ズレの直し方
ベルトを張り直し、イモネジを締める
電源を切り、ノズルとベッドが冷めてから作業してください。
印刷直後はノズルが300℃近く、ベッドも80〜100℃まで上がっているので、やけどの危険があります。
冷えたらヘッドとベッドを手でゆっくり動かし、重い場所や引っかかる場所が無いかを確かめます。
ベルトは指で軽く弾いて、片側だけ鈍い音がしないかを比べると緩みに気づけます。
張り方の機構は機種ごとに違うので、調整ネジの位置と締め方は公式のマニュアルで確認してください。
プーリーのイモネジは、モーター軸の平らに削られた面に当たるように締めると緩みにくくなります。
衝突を起こす浮きと垂れをなくす
反りが原因なら、直すのは層ズレではなく1層目です。
ベッドの清掃、ブリムの追加、素材に合ったベッド温度で端の浮きを抑えます。
ブリムとラフトのどちらを足すべきかはブリムとラフトの使い分けで解説しています。
サポート材が倒れる場合はサポート密度を上げるか、ブリッジとオーバーハングの限界を踏まえて造形の向きそのものを変えるほうが早いです。
速度・加速度・フロー上限を下げる
スライサーソフト側で、まず加速度を下げます。
全体速度を一律に落とすより、外周と内側の充填で使う加速度の上限を下げるほうが、仕上がりへの影響を抑えられます。
背の高い造形物では、造形の向きを変えて重心を下げるのも対処のひとつです。
直らないときに疑う駆動部とサポート窓口
ベルトを張り直しても同じ高さで再発するなら、ベルトの歯が摩耗しているか、プーリーの歯が削れている可能性があります。
ベルトは消耗品なので、歯が丸くなっていれば交換部品を取り寄せてください。
リニアレールやロッドに異物が噛んでいる場合も同じ症状になるため、動きの重さを手で確かめます。
潤滑剤は種類によってプラスチック部品を傷めるので、公式が指定したものだけを使ってください。
モーターが熱を持って止まる脱調や、駆動基板側の不具合が疑われる場合に、電流設定やファームウェアを自分で書き換えるのは勧めません。
メーカー保証の対象外になるうえ、発熱の原因を増やします。
購入元か正規代理店の窓口に、ズレの向き・発生する高さ・試した対処を添えて問い合わせてください。
層ズレに効果が薄い対処
検索でよく出てくるものの、層ズレには結びつきにくい対処もあります。
ノズル温度の上げ下げは、積層の密着や糸引きには関係しますが、座標がずれる現象そのものは変わりません。
フィラメントの乾燥も同じで、湿気で荒れるのは表面であって位置ではありません。
湿気が疑わしい症状は糸引きの原因と対処法で解説しています。
レベリングのやり直しも、1層目の定着には有効ですが、30層目で起きた横ずれは直りません。
自動レベリングでもズレが残る場面についてはレベリングのやり方で解説しています。
強度不足を疑ってインフィルの密度を上げるのも、造形物が重くなって慣性が増えるぶん、ベッドスリンガー型ではむしろ不利に働きます。
スライサーソフトの再インストールも、データが途中で壊れていない限り効果はありません。
層ズレを繰り返さないための設定と機種の条件
同じ失敗を減らすには、初期設定の速度をそのまま使わず、大物を印刷するときだけ加速度を落としたプロファイルを別に用意しておくのが現実的です。出先から様子を見られるよう、カメラ付きの機種ならタイムラプスではなくライブビューで途中経過を確認できます。
買い替えを考える段階なら、構造を見てください。
ベッドが前後に動くA1シリーズに対し、P1SやP2Sのような密閉型CoreXYはベッドが上下にしか動かないため、背の高い造形物でも慣性が増えにくい作りです。
P2SはNPUによるAI検出、ELEGOO Centauri Carbonはチャンバーカメラと121点の自動レベリングを公式が挙げていて、異常を早い段階で止められる構成になっています。
ただしCoreXYでもベルトは消耗するので、点検が不要になるわけではありません。
よくある質問
一度ずれた印刷は、途中から修正できますか
ずれた層より上を積み直す機能は家庭用機にはないため、途中からの修正はできません。
原因を直してから最初から印刷し直してください。
長時間の造形で途中のズレに気づいた場合は、そこで止めてフィラメントと時間の消費を抑えるほうが損失は小さくなります。
層ズレとZ方向に出る縞模様は同じ原因ですか
別の症状です。
横方向に一段飛ぶ層ズレはXY方向の駆動が原因で、横縞が一定間隔で並ぶ現象はZ軸のネジの曲がりやカップリングの偏心など、上下方向の送りに原因があります。
ズレの向きで切り分けてください。
1回だけ起きたなら、点検はしなくてよいですか
点検はしてください。
衝突が引き金だった場合でも、衝撃を受けたベルトやプーリーは緩みが進みます。
電源を切って冷ましてから、ヘッドとベッドを手で動かして引っかかりが無いかだけでも確かめておくと、次の長時間印刷での再発を減らせます。
まとめ
層ズレは、ずれた方向と再現する高さを見れば、駆動部の緩み・造形物への衝突・速度の出しすぎのどれかに絞り込めます。
同じ高さで必ず起きるなら浮きや垂れを直し、高さがばらつくならベルトとプーリーを点検し、速度を半分にして消えるなら加速度を下げてください。
温度調整やレベリングのやり直しは、この症状には結びつきません。
ぜひ本記事の切り分け手順と原因別の直し方を参考に、再印刷の前に当たりを付けてから手を動かしてください。



