3Dプリンターの温度設定の目安|素材別の考え方を解説
ノズル温度210℃、ベッド温度60℃です。
スライサーソフトの初期プロファイルに並ぶこの数字が、3Dプリンターの温度設定の出発点です。
ただしこの2つは役割がまったく違い、ノズル側は樹脂が溶けて出る状態を、ベッド側は1層目が板から剥がれない状態を決めています。
同じPLAでも銘柄や室温で適正値は動くので、数字を固定で覚えても失敗は減りません。
本記事では、ノズル温度とベッド温度が何を決めているのか、素材ごとの目安レンジ、温度タワーで自分の環境の適正値を出す手順を解説します。

おうち3Dプリンター編集部
おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
3Dプリンターの温度設定は「ノズル」と「ベッド」の2つを指す
スライサーソフト(3Dデータを印刷用の命令に変換するアプリ)で温度と書かれている欄は、ほとんどの場合ノズル温度とベッド温度の2つです。単位はどちらも摂氏(℃)で、ノズル温度はホットエンドの加熱ブロックに付いた温度センサーの読み値、ベッド温度はヒートベッドの板の温度を指します。
ノズル温度が決めるのは、フィラメントがどれだけ流れやすい状態で出てくるかです。
低すぎると樹脂が十分に溶けず、押し出し不足や層どうしの接着不良が出ます。
高すぎると流れすぎて、糸引きや垂れ、細部のつぶれにつながります。
ベッド温度が決めるのは1層目の定着で、板の表面を温めて樹脂が冷えて縮むのを遅らせ、端が浮き上がるのを抑えます。
機種ごとに上限が決まっている点も押さえておいてください。
Bambu Lab A1 miniはノズル最高300℃・ベッド最高80℃、A1は同じくノズル300℃でベッドは100℃まで上がります。
密閉型のP1SやP2Sはベッド100〜110℃まで対応し、H2DやH2Sはベッド120℃・ノズル350℃です。
ベッド上限80℃の機種では、ベッド100℃を前提にした素材は推奨から外れます。
素材別のノズル温度・ベッド温度の目安レンジ
素材が変われば適正値は大きく動きます。
下の表は家庭用FDM機でよく使われる素材のおおまかなレンジで、実際の設定値はフィラメントのパッケージやメーカーの推奨値を確認してください。
同じPLAでも銘柄によって20℃近く違う推奨が書かれていることがあります。
| 素材 | ノズル温度の目安 | ベッド温度の目安 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| PLA | 190〜220℃ | 常温〜60℃ | 置物・試作・室内で使う小物 |
| PETG | 230〜250℃ | 70〜85℃ | 力が掛かる部品・屋外で短期間使う物 |
| TPU | 210〜240℃ | 常温〜60℃ | 柔らかいパッキン・滑り止め |
| ABS・ASA | 240〜270℃ | 90〜110℃ | 耐熱が要る部品(密閉型機向け) |
ここで注意したいのがA1シリーズです。
A1 miniとA1の推奨フィラメントはPLA・PETG・TPU・PVAで、ABS・ASA・PC・PAは公式に推奨されていません。
オープンフレームで庫内の温度を保てないためで、ノズルが300℃まで上がるからといってABSを前提に設定を組むものではありません。
ABSやASAを使いたいなら、活性炭フィルターと筐体を備えたP1S以上の密閉型機が対象になります。
フィラメントの乾燥温度は印刷温度と別物
フィラメント乾燥機の設定温度を印刷温度と混同しないでください。
SUNLU FilaDryer S2やS4の上限は70℃、Creality SpacePi X4は45〜85℃の範囲で、いずれも樹脂を溶かさずに水分だけを抜く温度帯です。
PLAをノズル温度と同じ200℃で乾かすという発想は成り立ちません。
乾燥時間と温度は素材とメーカーで異なるので、使っている乾燥機とフィラメント双方の推奨値を見て決めてください。
温度タワーで自分の環境の適正値を出す
メーカー推奨値の真ん中を入れて終わり、にしない方法が温度タワーです。
高さ方向に段を分け、段ごとにノズル温度を5℃ずつ変えて1つの造形物を印刷し、仕上がりを見比べて決めます。
OrcaSlicerにはキャリブレーション機能として温度タワーが用意されているので、モデルを探さなくてもメニューから生成できます。
見るのは3点です。
段の表面に穴やスカスカの線が出ていればノズル温度が低すぎ、段と段をつなぐ渡り部分に細い糸が大量に残っていれば高すぎます。
もう1つは層どうしの接着で、印刷後に段を指でひねってみて簡単に層が剥がれる段は温度不足です。
穴が消えていて、かつ糸引きがいちばん少ない段を選びます。
糸引きだけが残る場合は、温度を下げる前にフィラメントの湿気を疑ってください。
吸湿した樹脂は水分が沸騰して表面を荒らすので、温度を何度下げても糸引きが消えません。
原因の切り分け方は3Dプリンターの糸引きの原因と対処法で解説しています。
温度の推奨値がメーカーごとにずれる理由
同じPLAなのにA社は200℃、B社は215℃と書いてあります。
これは添加剤と測定条件の違いによるものです。
PLAと名前が付いていても、剛性を上げる添加剤やマット調にする充填材、着色顔料が混ざっていて、溶けはじめる温度と流れやすさが銘柄ごとに変わります。
シルク調やグラデーション系は特に推奨値が高めに振れます。
もう1つは、ノズル温度の表示がセンサーの読み値であって、樹脂そのものの温度ではないという点です。
センサーは加熱ブロックに付いていて、ノズル先端まで数ミリ離れています。
ホットエンドの構造や冷却ファンの風量が機種ごとに違うため、同じ210℃表示でも実際に樹脂が受ける熱は機種間で一致しません。
メーカーが推奨値をレンジで書くのは、この差を吸収するためです。
そのため、他人の設定値をそのまま持ってきても同じ結果にはなりません。
フィラメントのパッケージに書かれたレンジを出発点として、自分の機種と室温で温度タワーを1回回します。
この手順を踏めば、銘柄が変わるたびに迷う場面が減ります。
温度が合わないと出る症状と、見分け方
温度が外れたときの失敗は、見た目で原因がある程度切り分けられます。下の対応を頭に入れておくと、設定をやみくもに動かさずに済みます。
ノズル温度が低すぎる・高すぎるとき
低すぎる側の症状は、押し出し不足で壁に隙間が空く、層が簡単に剥がれる、ノズルが詰まって途中から何も出なくなる、の3つです。
特に詰まりは低温での印刷を続けたあとに起きやすく、対処は3Dプリンターのノズル詰まりの直し方と予防策で解説しています。
高すぎる側は糸引き、オーバーハング部の垂れ、小さな突起部分が溶けてつぶれる、といった形で出ます。
ベッド温度が足りないとき
1層目が板に食いつかず、印刷中に四隅が浮いてくるのがベッド温度不足の典型です。
PLAでベッドを常温のまま印刷して、大きな平面の部品だけ端が反る、というのがよくある形になります。
ただし定着しない原因はベッド温度だけではなく、プレート表面の油分やZオフセットのずれも同じ症状を出すので、温度を上げる前に切り分けてください。
順序は3Dプリントがベッドに定着しない原因と対処法で解説しています。
反り方が四隅の持ち上がりとして出ているなら3Dプリンターの反りの原因と対処法が、逆に1層目だけ横に広がっているならエレファントフットの原因と直し方が該当します。
ベッド温度は高ければよいものでもありません。
PLAでベッドを上げすぎると1層目が柔らかいまま広がり、底面の端がはみ出します。
症状と原因の対応を一覧で確かめたいときは3Dプリンターの失敗の原因を症状から探す一覧をたどってください。
温度設定はどこに書いてあるか
確認する場所は3か所あります。
1つ目はフィラメントのパッケージまたはスプールのラベルで、推奨ノズル温度と推奨ベッド温度がレンジで印字されています。
通販で買う場合は商品ページの仕様欄に同じ情報が載っていることが多く、届く前に確認できます。
スライサーソフトのフィラメントプロファイル
Bambu StudioやOrcaSlicer、Curaには素材ごとの初期プロファイルが入っていて、ノズル温度・ベッド温度に加えて1層目だけ温度を変える設定も持っています。1層目のベッド温度が本体より5〜10℃高く設定されているのは、定着を優先しているためです。
プリンター本体の仕様表
ノズルとベッドの上限温度が書かれています。
使いたい素材の推奨ベッド温度が機種の上限を超えていれば、その素材はその機種の対象外です。
買う前に見るならここが先で、フィラメント側の推奨値はあとから確認できます。
なお、Bambu Labの純正フィラメントはスプールにRFIDタグが入っていて、AMS lite(4巻を自動で切り替える供給ユニット)やAMS 2 Proと組み合わせると設定が自動で読み込まれます。他社製フィラメントではこの自動判別が働かないので、プロファイルを手で選んでください。
よくある質問
PLAでベッドを加熱しないと印刷できませんか
常温のプレートでもPLAは印刷できる場合があり、Bambu Labの常温プレートのようにPLA向けの非加熱運用を想定したプレートもあります。
ただし底面積が広い部品や細長い部品は、冷えて縮む力で端が浮きやすくなります。
40〜60℃程度に温めておくと定着が安定するので、剥がれが出たら先にベッド温度を上げてください。
ノズル温度を上げれば印刷速度も上げられますか
ある程度までは関係しますが、速度を決めているのは最大吐出量(フロー)です。
A1 miniとA1は公式条件で28mm³/s、P2SやH2Dは40mm³/sと機種ごとに上限があり、温度を上げてもこの値は超えられません。
速度を上げたのに壁が薄くなる場合は、温度不足よりも吐出量が追いついていない状態を疑ってください。
室温が低い冬は設定温度を上げるべきですか
数字を一律に上げるのではなく、同じ設定で温度タワーをもう一度回して確かめてください。
室温が下がると造形物が冷える速度が上がり、層の接着と反りの出方が夏とは変わります。
オープンフレームの機種はこの影響が大きいので、冬だけ反りが出るならベッド温度を5℃ずつ上げて様子を見る方法が取れます。
暖房の風がプリンターに直接当たる場所は、部分的に冷やされて反りの原因になるので避けてください。
まとめ
温度設定で見るのはノズルとベッドの2つで、前者は樹脂の流れ、後者は1層目の定着を決めています。
素材ごとの目安レンジは出発点にすぎず、銘柄の添加剤や機種のホットエンド構造で適正値はずれるので、新しいフィラメントを使うときは温度タワーを1回回して自分の環境の数字を出すのがいちばん確実な方法になります。
使いたい素材の推奨ベッド温度が機種の上限を超えていないかは、買う前に仕様表で確かめてください。
ぜひ本記事の素材別の目安レンジと温度タワーの手順を参考に、手元のフィラメントに合った設定値を出してみてください。



