SHARE:

3Dプリンターの速度設定の目安|速さと品質の折り合い方

仕様表に「最高速度500mm/s」と書かれているのに、小物ひとつ作るのに何十分もかかります。mm/sはノズルが動く速さの上限で、造形の全工程がその速さで走るわけではありません。

実際、ELEGOO Centauri Carbonは最高500mm/sに対して推奨250mm/s、Creality K1Cは最高600mm/sに対して常用300mm/sを公式が併記しています。所要時間を左右するのは上限よりも、1秒間に何立方ミリの樹脂を押し出せるかという体積流量です。

本記事では、mm/sとmm³/sの読み分け・用途から常用速度を決める手順・速度を上げたときに最初に崩れる箇所を解説します。

おうち3Dプリンター編集部

おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。

※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。

3Dプリンターの速度はmm/s表記で、カタログ値は上限の数字

mm/sは、ノズルを載せたツールヘッドが1秒間に何ミリ動くかを表す単位です。

造形サイズのmmやフィラメント径の1.75mmとは別の数字なので、同じ仕様表に並んでいても混ぜないでください。

公式が「最高速度」として載せているのは理想的な条件で到達できる上限値で、実際の造形ではひと筆ごとに加速と減速を繰り返すため、平均するとかなり下の速さで動きます。

上限と同じくらい見てほしいのが最大体積流量で、単位はmm³/sです。

ノズル幅×層厚×速度で押し出される樹脂の量を表し、溶けて出てくる量が足りなければ、ツールヘッドだけ速く動いても線は細るか途切れます。

Bambu Lab A1 miniとA1は28mm³/s(公式の測定条件での値)、P2SとH2Dは40mm³/s、ELEGOO Centauri Carbonは32mm³/sと公表されていて、この数字が実質的な上限を決めます。

H2Sのようにオプションの高流量ホットエンドで65mm³/sまで上げられる機種もあります。

速度の仕様は4タイプ|最高・推奨・加速度・体積流量

表記単位意味見るべき場面
最高速度mm/sツールヘッドが出せる移動速度の上限機種の性能差を大づかみに比べるとき
推奨速度(常用速度)mm/sメーカーが実用値として併記する速さ初期プロファイルのまま使うとき
最大加速度mm/s²目標の速度まで上げる勢い小物や細かい形を多く作るとき
最大体積流量mm³/s1秒間に押し出せる樹脂の体積大きな造形の所要時間を見積もるとき

4つのうち、手のひらサイズの造形でいちばん時間を左右するのは加速度です。

1本の直線が20mmしかなければ、500mm/sに達する前に減速に入るので、上限の数字はほとんど使われません。

A1シリーズは最大10000mm/s²、P1S・P2S・H2D・Centauri Carbon・K1シリーズは20000mm/s²と公表されていて、小物中心の使い方ではこの差のほうが体感に出ます。

用途から常用速度を決める手順

作る物の大きさと見た目の要求で決める

飾る小物や寸法を合わせたい部品なら、外壁だけ落として内側は既定のままにします。

外壁は表面に出る線なので、ここが乱れると全体が粗く見えますが、インフィル(内部の充填)は見えないため速いままで差し支えありません。

逆に治具や試作のように形だけ確かめたい物は、メーカーが載せている推奨速度のまま回したほうが、設定をいじる時間ぶん早く終わります。

インフィルの密度とパターンでも時間は大きく動くので、インフィルの密度とパターンの決め方で解説している考え方とあわせて調整してください。

印刷素材が決める上限

TPUのような柔らかい素材は、押し出し機の中でフィラメントがたわむため送りが追従せず、硬いPLAと同じ速度では出せません。

PETGは粘りがあるぶん移動中に樹脂を引きずりやすく、速度を上げると糸引きが増えます。

速度を上げるときはノズル温度を一緒に見直す必要があり、素材別の温度設定の目安と糸引きの原因と対処法で解説している範囲を先に確認すると、やみくもに下げずに済みます。

同じ500mm/sでも機種によって造形時間が変わる理由

最高速度が同じでも、動く部品の重さが違えば実際に出せる速さは変わります。

A1 miniとA1はベッドが前後に動くベッドスリンガー型で、造形物を載せた台ごと往復させるため、背が高く重い造形では揺れを抑える必要が出ます。

P1SやP2SはCoreXYという方式で、ベッドは上下するだけでツールヘッドが水平に動くので、造形が進んでも動く質量は増えません。

公式の数字の書き方にも差があります。

Centauri Carbonは最大加速度20000mm/s²に対して既定値を10000mm/s²、最高速度500mm/sに対して推奨250mm/sと二段で書いていて、K1Cも最高600mm/sと常用300mm/sを分けています。

つまりカタログの大きい数字は「設定として入力できる上限」であって、そのまま使う前提の値ではありません。

比べるときは、最高速度・加速度・体積流量の3つを同じ列に並べてください。

速度を上げすぎたときの症状と、下げる順番

速すぎる設定でまず崩れるのは1層目です。

ノズルがプレートに樹脂を押し付ける時間が足りず、線が丸まって定着しないまま剥がれます。

続いて角が持ち上がる反り、層がずれる段差、外壁のうねりという順で見た目に出ます。

症状から当たりを付けたいときは失敗の原因を症状から探す一覧、剥がれが続くときはベッドに定着しない原因と対処法と反りの原因と対処法で解説しています。

直すときは、1層目の速度、外壁の速度、インフィルの速度の順に下げます。

インフィルから下げても見た目はほとんど変わらず、時間だけが伸びます。

全体を一律に半分にするのも避けてください。

どの設定が効いたのか分からなくなり、次の造形で同じ判断ができなくなります。

速度の設定値を確認できる場所

メーカー側の値は、公式サイトの仕様ページにある速度・加速度・流量の3項目で確認できます。商品ページの見出しには最高速度だけが大きく出ていることが多いので、仕様の一覧まで降りてから3つを拾ってください。

実際に印刷に使われる値は、スライサーソフトの「スピード」欄にあります。

OrcaSlicerには温度タワーやフローレートのキャリブレーション機能が用意されていて、自分の環境で出せる流量を測ってから速度を決められます。

なおOrcaSlicerは公式サイトを装う配布元が報告されているため、入手先を確かめてからダウンロードしてください。

UltiMaker Curaはカスタムモードで400を超える設定項目を持つので、まず推奨プロファイルから入って、外壁の速度だけ触るところから始めると迷いません。

よくある質問

最高速度が倍の機種に買い替えれば、印刷時間も半分になりますか

半分にはなりません。

体積流量が足りなければノズルから出る樹脂の量は増えず、小物では直線が短くて最高速度に届かないため、加速度と造形物の形のほうが所要時間を決めます。

大きな面を持つ造形ほど差が出て、手のひらサイズの小物ほど差は小さくなります。

速度を上げたらノズル温度も上げるべきですか

流量が増えるぶん、樹脂が溶けきる時間が短くなるので、温度側の見直しが要ります。

ただし素材ごとに推奨範囲があるため、範囲の上側へ5℃ずつ動かして試すのが基本です。

温度を上げると糸引きが増えることもあるので、片方だけを一度に変えてください。

速度を下げても表面が荒れたままのときは何を疑えばいいですか

フィラメントの吸湿、ノズルの摩耗、ベルトのたるみが残ります。

湿ったフィラメントは温度でも速度でも直らず、乾燥させるしかありません。

1層目の際が広がって膨らんでいる場合は速度ではなく高さと温度の問題で、エレファントフットの原因と直し方で解説している手順のほうが近道になります。

まとめ

3Dプリンターの速度表記はmm/sで、カタログの最高速度は設定できる上限です。

実際の所要時間はmm³/sの体積流量と加速度で決まり、Centauri CarbonやK1Cのようにメーカー自身が推奨速度を併記している機種もあります。

設定を触るときは1層目、外壁、インフィルの順に下げると、どこが原因だったのか分かります。

ぜひ本記事の4タイプの仕様表と下げる順番を参考に、手元の機種の設定を見直してください。

あなたへのおすすめ