3Dプリンターのブリムとラフトの使い分け|反り・定着の対策
スライサーの設定画面に、スカート・ブリム・ラフトの3つが並んでいます。
名前が違うだけに見えて、造形物に触れる面積がまったく別の3タイプです。
ラフトは底面ぜんぶを下から受ける捨て板、ブリムは底面の外周に地続きで広がるつば、スカートは造形物に触れません。
この違いを知らずに選ぶと、剥がすのに苦労したり、逆に角の反りが止まらなかったりします。
指定する単位も別で、ラフトは層数とエアギャップ(mm)、ブリムは幅(mm)または線数です。
本記事では、ラフトの構造と単位の読み方・ブリムとの使い分け・付けたときに変わる造形高さと底面を解説します。

おうち3Dプリンター編集部
おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
3Dプリンターのラフトは造形物の下に敷く捨て板
ラフトは、造形物の底面より一回り大きい板をベッド上に数層印刷し、その上に本体を積む方式です。
多くのスライサーでは層数(枚)で指定し、下の1〜2層は太いラインで粗く、本体を受ける最上層は密に敷く構成になります。
造形物の外形より数mm外側まで広がるのが普通で、この張り出しぶんも印刷範囲に含まれます。
本体とラフト最上層の間には、エアギャップと呼ぶすき間を設けます。
単位はmmで、目安は0.1〜0.2mm程度。
狭くすると密着して外れなくなり、広げすぎると1層目が宙に浮いてラインが垂れます。
0.05mm刻みで動かす調整項目だと覚えておくと、数値の意味を取り違えません。
役割は、ベッドと造形物の間に緩衝材を一枚はさむこと。
プレートにわずかな歪みがあっても、1層目の高さが少しばらついても、ラフト側が受け止めます。
ただし、そもそも1層目が張り付かない原因がプレート表面の油分やZオフセットのずれなら、ラフトを足しても再発する。
ベッドに定着しない原因の切り分けで解説している順番で、先にそちらを潰してください。
スカート・ブリム・ラフトの違いは、造形物に触れる面積
3つは同じ「密着補助」の枠に入っていますが、造形物との接し方が違います。
表記と役割を並べると、選ぶべき場面がはっきりします。
| 表記 | 指定する単位 | 造形物との接触 | 該当する人 |
|---|---|---|---|
| スカート | 造形物からの距離(mm)と周回数 | 触れない | 吐出を安定させたい人。印刷開始前にノズルの調子を見たい場合の標準設定 |
| ブリム | 幅(mm)または線数 | 底面の外周に地続き | 接地面が小さい、角の立った形を出す人 |
| ラフト | 層数(枚)+エアギャップ(mm) | 底面全体の下に一枚はさむ | 反りやすい素材を使う人、プレートの状態にばらつきがある人 |
印刷時間と材料の消費も、この順で増えます。
スカートは数十秒で終わる線一本ですが、ラフトは底面積ぶんの層を丸ごと余分に積む。
剥がす手間と、剥がすときに造形物を傷める危険もラフトがいちばん大きくなります。
ラフトを使うか、ブリムで足りるかは接地面と素材で決まる
まず底面の形と接地面積で振り分ける
迷ったときは、造形物をプレートに置いた状態で下から見た面積を基準にしてください。
- 底が平らで、手のひらほどの接地がある:スカートだけで十分
- 細い脚が数本、または角が鋭く立っている:ブリムを幅5mm前後から
- ブリムを付けても角が浮く、プレートに傷や歪みがある:ラフト
この順で試すのは、後ろほど失うものが多いからです。
ブリムは外周をニッパーで落とせば済みますが、ラフトは底面全体の仕上がりに影響します。
素材と機種の組み合わせでも判断が変わる
反りの出やすさは素材で決まります。
PLAは冷えても縮みが小さく、ラフトが要る場面はほとんどありません。
PETGは粘りがある反面プレートに食いつきすぎることがあり、むしろ剥がしにくさのほうが問題になります。
大きく縮むのはABS・ASAで、これらは庫内温度を保てる密閉型でないと安定しません。
Bambu Lab P1Sは密閉筐体でABS・ASAが対応素材に入っている
一方、オープンフレームのA1・A1 miniはABS・ASA・PC・PAが公式に推奨ではないとされています。
つまりA1シリーズを使うなら、対象はPLA・PETG・TPU・PVAの範囲。
この4つでラフトが必要になるのは例外的な形状のときだけです。
素材ごとの縮み方はフィラメント種類の早見表で解説しています。
角だけが持ち上がる症状なら、反りの原因と対処で扱っているベッド温度と1層目の設定が先です。
既定値がスライサーや機種でずれるのは、プレートとノズル径が違うから
他人が公開しているラフト設定をそのまま持ち込むと合わないことがあります。
理由は3つあり、どれも自分の環境の数値に置き換えれば解決します。
1つ目はプレートです。
Bambu Labだけでもテクスチャー PEI、Smooth PEI、常温プレート、高温プレートと種類があり、食いつきの強さが違う。
表面が粗いプレートはそれ自体が密着補助として働くので、ラフトの必要性が下がります。
2つ目はベッド温度の上限で、A1 miniは80℃、A1とP1Sは100℃、P2Sは110℃と機種ごとに違います。
温度で足りているものを、ラフトで補おうとしても遠回りです。
3つ目はノズル径。
標準の0.4mmを0.6mmや0.8mmに替えるとライン1本の幅が変わるため、同じ「ブリム線数5本」でも実際の幅が変わります。
幅で指定するほうが機種をまたいでも意味がぶれません。
調整の順序は、プレートと素材の推奨ベッド温度を合わせる、ラフト層数は既定のまま出す、剥がれ方を見てエアギャップだけ0.05mm動かす。
この3手で足ります。
ラフトを付けると造形高さと底面の質感が変わる
造形可能高さはラフトの厚みぶん減る
最大造形体積はプレート面からの高さで表記されます。
A1 miniは180×180×180mm、A1とP1Sは256×256×256mm。
ラフトを敷くと、その厚みとエアギャップぶんだけ上に積める高さが減ります。
差は1mmに満たないことが多いものの、上限ぎりぎりのモデルではスライス時にはみ出しの警告が出ます。
横方向も同じで、ラフトは造形物より外へ広がるため、プレート一杯に置いたモデルは配置エラーになる。
底面はプレートではなくラフトの写しになる
ラフトを使うと、底面に残るのはラフト最上層の跡です。
テクスチャー PEIの梨地模様も、Smooth PEIの平滑面も出ません。
底を見せたい造形なら、ラフトではなくブリムを選び、プレート側で質感を決めるほうが目的に合います。
剥がすときに底面の角を割ってしまう事故も、接触面が広いラフトのほうが起きやすい。
完全に冷ましてから外すのが基本です。
なお、剥がす作業や高速移動の反動でプリンター自体が動くと、次の造形の1層目に響きます。
A1シリーズは最高500mm/s・加速度10000mm/s²で動くので、設置面の影響を受けやすい。
揺れない設置台の条件で解説している耐荷重と剛性を先に満たしておくと、密着補助に頼る場面自体が減ります。
ラフトの数値はスライサーのどこに書いてあるか
設定項目は、サポートや冷却と同じ階層にある「ビルドプレートへの密着」「付着」といった名前のタブにまとまっています。
ラフトを選ぶと層数とエアギャップ、ブリムを選ぶと幅か線数だけが有効になる作りが一般的で、両方を同時に有効化はできません。
数値を触る前に、プレビュー画面で外形を確認してください。
ラフトの外周がプレートの端に掛かっていれば、モデルを中央へ寄せるか、ラフトをやめてブリムに切り替える判断になります。
ベッド温度の推奨値は、フィラメントのスプールラベルかメーカーの商品ページに記載があります。
造形サイズの上限は各機種の公式仕様です。
この2つを押さえたうえでなお1層目が安定しないなら、原因はラフトの設定ではなく別の場所にあります。
症状から候補を絞る手順は失敗の原因を症状から探す一覧で解説しています。
よくある質問
ラフトとブリムは同時に使えますか
多くのスライサーでは排他で、片方を選ぶともう片方の設定は無効になります。
両方の効果が欲しい状況というのは、たいてい「ブリムでは足りていない」状態なので、ラフトに切り替えて層数を既定のまま出すのが素直な対処です。
ラフトが固くて剥がれず、造形物が割れてしまいます
エアギャップが狭すぎる可能性があります。
0.05mm単位で広げて再印刷し、印刷直後ではなくプレートごと冷ましてから外してください。
薄いスクレーパーを使う場合は刃先が滑るので、手を切らない向きで力を入れること。
PLAでもラフトを付けたほうがいいですか
通常は不要です。
PLAは縮みが小さく、清掃したプレートと適正なベッド温度があれば、スカートだけで完結します。
ラフトを検討するのは、接地が極端に小さい形状か、プレート表面が傷んでいて交換までのつなぎが要る場合に限られます。
まとめ
ラフトは層数とエアギャップ(mm)で指定する捨て板で、造形物の底面全体を下から受けます。
ブリムは幅か線数で指定する外周のつば、スカートは触れない線一本。
接地面が小さければブリム、素材が反るかプレートに不安があればラフト、という順で選べば迷いません。
付ける代償として造形高さがわずかに減り、底面の質感はプレートではなくラフトの写しになります。
使っている機種のベッド温度上限とプレートの種類が分かれば、必要な設定はおのずと絞られます。
ぜひ本記事の3タイプ比較表と調整の3手順を参考に、自分の素材と造形物に合う密着方法を決めてください。



