3Dプリンターにエンクロージャーは必要?素材で決まる
ABS対応の機種を探すと、仕様表には必ず「密閉型」の文字が並びます。
エンクロージャーは造形室(チャンバー)を板やガラスで囲った筐体の呼び名で、外気の流れとホコリを遮り、造形中の熱を庫内に留めるための構造です。
ただし、囲うことと庫内を温めることは別の機能。
Bambu Lab P1Sの構造欄は「密閉型(プラスチックとガラス)」で加熱の記載がなく、H2Dはアクティブチャンバー加熱で最高65℃と明記されています。
同じ「密閉」の欄を読んでいても、中身は違います。
本記事では、エンクロージャーの4タイプ・使う素材から必要度を決める手順・仕様表のどの欄を見るかを解説します。

おうち3Dプリンター編集部
おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
エンクロージャーは造形室を囲う筐体|密閉と庫内加熱は別の機能
エンクロージャーは、ノズルとビルドプレートが収まる造形室を囲った筐体を指します。
オープンフレームの機種にはこれがなく、造形物は室温と部屋の空気の流れにそのまま晒されます。
囲うことで変わるのは4点。
外気の流れを遮る、造形熱を庫内に留める、においや微粒子を筐体内に集めてフィルターへ通す、ホコリと手の接触を防ぐ。
この4点です。
分けて考えたいのが、囲うことと庫内を温めることの違いです。
P1Sの構造欄は「密閉型(プラスチックとガラス)」で、庫内を能動的に加熱するという記載はありません。
対してH2Dはアクティブチャンバー加熱を備え、庫内を最高65℃まで上げると公式仕様に書かれています。
前者は造形熱が逃げにくい箱、後者は温度を作る箱です。
ABSやASAは冷却の差で反りが出やすい素材として扱われ、P1Sは筐体と冷却と空気濾過が付くことでABS・ASAに対応すると公式FAQに記載があります。
反りや層のはがれが実際に起きたときの切り分けは、症状から原因を探す一覧で解説しています。
エンクロージャーの4タイプと、それぞれ何ができるか
| 表記 | 意味 | 該当する機種の例 | 選ぶ人 |
|---|---|---|---|
| オープンフレーム | 囲いなし。庫内は室温のまま | A1 mini(180×180×180mm)/A1(256×256×256mm)/P1P | PLA・PETG・TPU中心で、置き場所の自由度を優先する人 |
| 密閉型(加熱なし) | プラスチックとガラスで囲い、造形熱を庫内に留める | P1S/P2S(ともに256×256×256mm) | ABS・ASAを公式対応の範囲で使いたい人 |
| 密閉型+アクティブチャンバー加熱 | 庫内を能動的に加熱(H2D・X2Dはいずれも最高65℃) | H2D(単ノズル325×320×325mm)/X2D | PC・PA・繊維強化材まで扱う人 |
| 後付けの囲い | オープン機を市販品や自作の箱で囲う | — | ホコリと風を減らしたい人。対応素材の表は変わらない |
4行目だけ性質が違います。
上の3タイプは機種の仕様として温度と素材が保証されている一方、後付けの囲いはメーカーの推奨素材表を書き換えません。
ホコリ対策や設置環境の整備としては意味がありますが、素材の上限を広げる手段としては数えないでください。
機種ごとの構造と対応素材の並びはBambu Lab全機種の違いを比較で解説しています。
ABSを使うかどうかで、エンクロージャーの必要度は決まる
PLA・PETG・TPUだけならオープンフレームで足りる
A1 miniとA1の公式推奨フィラメントはPLA・PETG・TPU・PVAです。
この4つで作る範囲なら、囲いのない機種で困りません。
注意点は素材側にひとつ。
TPUはAMS lite(自動素材供給システム)に非対応なので、柔らかい素材は外部スプールから直接送ります。
ABS・ASAが前提なら密閉型の本体を選ぶ
A1シリーズはABS・ASA・PC・PA・PET・カーボンやガラス繊維強化材が、公式に「推奨ではありません」と書かれています。
オープンフレームで庫内温度を保てないためです。
ここを後付けの箱で埋めようとしても、公式の推奨が変わるわけではありません。
ABS・ASAを常用するなら、対応素材にABS・ASAが並ぶP1SやP2Sのような密閉型を最初から選ぶほうが確実です。
PC・PA・繊維強化材まで見るならノズル材質も一緒に確認する
囲いだけでは足りない領域があります。
P1Sは付属ノズルがステンレスのため、カーボンやガラス繊維系には不向きと公式FAQに記載があります。
P2Sは付属ノズルが焼入スチールでPLA-CFやPA6-CFなどに対応し、H2Dはノズル最高350℃・庫内65℃でPPS系まで対応素材に含みます。
ノズル径と材質の考え方はノズル交換時期とサイズの選び方で解説しています。
「密閉型」「フィルター付き」の表記が機種ごとにずれる理由
ずれの原因は、囲い・庫内加熱・空気濾過・ベッド温度という別々の仕様が、商品ページでまとめて「密閉型」の印象に吸収されてしまうことです。
実際にはベッド最高温度も機種で違い、A1 miniは80℃、A1とP1Sは100℃、P2Sは110℃、H2Dは120℃。
高温を要する素材では、囲いの有無と同じくらいベッド温度が上限を決めます。
空気濾過の構成も同じ「フィルター付き」で括れません。
- P1S:活性炭フィルター
- P2S:活性炭+VOCフィルター+粒子状物質フィルター
- H2D:G3プレフィルタ+HEPA H12+ヤシ殻活性炭
構成が違えば捕らえる対象も変わります。
フィルターがあることを、においや排出物質を気にしなくてよい根拠として読まないでください。
長時間の印刷では、密閉型でも部屋の換気をおすすめします。
排出物質については、A2LがUL 2904 GREENGUARD認証を取得していると公式に記載されているように、認証の有無も機種ごとです。
仕様表では「認証」の欄を個別に見てください。
選び間違いが出るのは設置寸法と対応素材の2か所
本体寸法だけで測ると置けない
P1Sの本体寸法は389×389×458mmですが、公式の推奨設置スペースは500×500×950mmです。
扉と上部の開閉ぶん、背面のクリアランス、フィラメントの取り回しが加わるからです。
H2Dは492×514×626mmで31kg。
この重さになると棚板の耐荷重が先に問題になります。
オープンフレームのA1はベッドが前後に動くため、本体寸法に可動域を足して測ります。
設置寸法の測り方は置き場所の条件、重量に耐える台の条件は揺れない設置台の選び方で解説しています。
仕様表で見る欄は6つ
公式仕様ページで確認するのは、構造(Structure)、チャンバー加熱の有無と上限温度、対応フィラメントと非推奨フィラメント、エアフィルター、本体寸法、推奨設置スペースの6欄です。
日本の正規代理店の商品ページにも同じ数値が転記されているので、どちらで読んでも構いません。
ひとつ注意したいのは電気系の表記です。
PSE認証は本体とACアダプターで別に扱われ、販売店が独自に取得しているものは並行輸入品には付きません。
「PSE付き」の一語をひとくくりで読まないでください。
よくある質問
オープンフレームの機種を自作の箱で囲えばABSは印刷できますか
メーカーの推奨素材表は変わりません。
A1シリーズはABS・ASA・PC・PAが公式に「推奨ではありません」と明記されています。
囲いを足しても、その表記が推奨に変わるわけではありません。
庫内へのヒーター増設のような電気系の改造も勧められません。
ABSを常用する予定なら、対応素材に含む密閉型の機種を選んでください。
密閉型のプリンターでPLAは使えますか
使えます。
P1SもP2Sも、対応フィラメントの先頭にPLAが並んでいます。
スライサー(造形データを機械の動作に変換するソフト)の素材プロファイルをそのまま使い、扉や上部カバーの扱いはメーカーの案内に従ってください。
エンクロージャーがあれば換気しなくても大丈夫ですか
換気が不要になるとは言えません。
フィルターの構成は機種ごとに違い、活性炭のみのものからHEPAを組み合わせたものまで幅があります。
長時間の印刷では部屋の換気を併用してください。
においで頭痛や気分の悪さを感じる場合は、無理に使い続けず、気になるときは医療機関に相談してください。
まとめ
エンクロージャーの有無は、置き場所の都合ではなく使う素材から決まります。
PLA・PETG・TPU中心ならオープンフレームで足り、ABS・ASAを常用するなら公式に対応と書かれた密閉型、PC・PAや繊維強化材まで扱うならアクティブチャンバー加熱とノズル材質まで見る、という順序です。
そして密閉型を選ぶときは、本体寸法ではなく推奨設置スペースで置き場所を測ってください。
ぜひ本記事の4タイプの表と対応素材の並びを参考に、自分が作りたい物の素材から機種を絞ってください。



